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「西太后―大清帝国最後の光芒」加藤 徹

2011/07/09公開 更新
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西太后―大清帝国最後の光芒 (中公新書)

【私の評価】★★★★☆(85点)


■現在の中国の本質を知るためには、
 歴史を学ぶ必要があります。


 そして、歴史を学ぶためには、
 テーマを決めると
 学びやすい。


 そういう意味では、
 清朝の最後に権力者として君臨した
 西太后は、中国史の切り口として
 最良なのです。


・現代中国人の心情としては、西太后の統治時代が、
 アプリオリに現代中国の領土の基準となっているのである。
 現代中国人は、新疆やチベットの独立は
 絶対に認めない(p124)


■清朝は、アヘン戦争で破れ、
 不平等条約を締結。


 清仏戦争で善戦するも、
 ベトナムの宗主権を放棄。


 日清戦争で日本に破れ、
 賠償金と台湾・遼東半島割譲、
 朝鮮の宗主権放棄と、
 さんざんでした。


 この日清敗戦の背景には、
 西太后が中国海軍の予算を
 離宮の建設費に流用したため
 兵器の更新ができなかったことも
 大きな要因だったようです。


・かつてイギリスは円明園を焼き払い、
 ロシアは沿海州を奪い、
 フランスはベトナムを獲った。
 しかし今も昔も中国人が
 最も恐れ憎むのは日本である。(p210)


■歴史はくり返すといいますが、
 中国は、また清朝の栄光を取り戻せるのか。


 そしてまたその栄光から、
 内政の失敗と足の引っ張り合いから
 自壊していくのか。


 こうして中国の思慮遠謀、
 権力闘争を見ていると、
 中国に生まれなくてよかったと
 感じました。


 これは平和ボケなのかもしれませんが、
 反日愛国が突出しないよう
 祈るのみです。


 加藤さん、良い本をありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・清朝の諸帝も、血統的には満州人・モンゴル人・漢民族の
 混血であり、純血の満州人ではない。皇帝の混血化は、
 后妃を八旗(満州八旗・蒙古八旗・漢軍八旗)の女子から
 選ぶという清朝独特の后妃選定システム「選秀女」を
 代々繰り返した結果である(p11)


・初代の順治帝から第九代の光緒帝まで、
 生まれた皇子・皇女の人数の累計は146人。
 このうち十五歳以前に夭折した皇子女は累計で74人。
 十五年生存率は約50パーセントであった(p54)


・中国政治の常道では、
 まず不正摘発の鞭で官僚群を屈服させ、
 そののち飴を与えて心服させる(p80)


・カリスマ的政治家が、実務派政治家を
 失脚させたり復活させたりして、
 彼らに権力が集中しすぎぬよう調整することは、
 中国政治の常道である(p136)


・現代中国の歴史教育では、近代史の人物を、
 善玉と悪玉に峻別して教える。もちろん、
 善玉と悪玉の線を引くのは中国共産党である。
 たとえば、西太后は特A級の悪玉・・・(p156)


・憎まれる政治家が以外に政権を維持することがある。
 第二次世界単戦中、首相だった東条英機は、
 昭和天皇の覚えはめでたかったものの、
 下からの人望はなかった(p165)


・儒教の本質は、大きなテーブルに並ぶご馳走に
 誰から箸をつけるかということだ
 これは、陳舜臣氏の名言である(p200)


・中国の最高権力者は、しばしば臣下からの上奏分を
 「錦の御旗」にする。西太后しかり。壁新聞を利用した
 毛沢東しかり。近年の中国政府は、インターネットの
 反日サイトや反日デモを「錦の御旗」に利用する・・(p188)


・反日の激烈さは反英や反仏、反露とは次元が違うこと。
 反日愛国という「正論」には主流派さえ
 表立って反対できぬこと。
 反日の主張は最終的に中国の体制改革の
 主張に収斂してゆくこと。
 以上のような中国の反日愛国運動の特徴は、
 清末も今日も、あまり変わっていない。(p213)


・植民地経営に関する格言に
 「首長を探せ」という言葉がある。
 列強が自ら原住民を搾取する直接統治は、
 危険であり、効率も悪い。
 そこで、原住民を支配する力はあるが、
 列強に反抗するほどの力のない「強い男」を
 首長として認定して、植民地の間接統治を
 させる方法がよくとられた(p251)


西太后―大清帝国最後の光芒 (中公新書)
加藤 徹
中央公論新社
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【私の評価】★★★★☆(85点)



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