「独立外交官」カーン・ロス

独立外交官 国際政治の闇を知りつくした男の挑戦
カーン ロス
英治出版
売り上げランキング: 191879

【私の評価】★★★☆☆(79点)


■イギリス外交官として、国連安全保障理事会で
 イラクへの攻撃に関わりながら、
 その外交の不合理さに外交官を辞し、
 外交コンサルタントとして独立した著者の一冊です。

 「独立外交官(Independent Diplomat)」というのが
 かっこいいですね。


■本場のイギリス外交官だけあって、
 リアルな外交の世界を解説してくれます。

 外交官は、ある程度独自に判断、行動し、
 間違っても責任を問われない
 というのは、本当なようです。

 どうりで太平洋戦争の宣戦布告を
 遅れさせた外務省の役人も、
 責任問題にならないわけです。


・歴史的な慣習の積み重ねで、どういうわけか、
 外交官は特別なエリートで、外部からの検証や影響を
 ほとんど受けず、説明責任も求められずに、自由に政策決定
 していいのだということが受け入れられている。(p33)


■そして、外交の判断となるのは国益。

 そして、その国益は、政治で左右されますが、
 基本的には「お金」が基準となっているようです。

 いくら現地が悲惨な状態であっても、
 人権問題があっても、虐殺があっても、
 無視される場合があるのです。

 著者は、こうした論理に
 耐えられなくなったというのが、
 独立外交官となった理由だそうです。


・「中間派」の支持獲得に効果を発揮するのは、
 決議の内容の検討ではなく、むしろ政治的な力に物を言わせて、
 非常任理事国に「われわれ」と同じ見解をもたせるよう
 働きかけることだった。・・・政治的圧力は通常、外相同士の
 非公式の電話で伝えられ、スロベニアの場合は、
 米大統領の公式訪問によって伝えられた(p223)


■テレビでしか伝わらない外交という世界の
 一端を伝えてくれる一冊でした。

 国家が国益を考えて行動するとき、
 時として弱者を捨て去るという現実を知って、
 少し怖い気持ちにもなりました。

 社会人として読んでおくべき一冊でしょう。
 本の評価としては★3つとしました。


━━━━━━━━━━━

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・外交官としての最初の数年は、僕もこうしたやり方で
 世界について語るのが好きだった。ドイツの国益は何か、
 ロシアはどう動くのか、いかにしてフランスを出しぬくか
 (イギリスにとって永遠の関心事だ)(p30)


・僕は上司や閣僚に質問をぶつけたり議論を交わしたりするのが
 好きだったが、キャリアを上り詰めるには、
 こうしたふるまいを自制する必要があった。(p29)


・ケシ栽培地帯(アフガニスタンのほぼ全域といっていい)
 の農民に金を払って、その年の収穫を土に埋めさせることが
 計画された・・・ヘロインの収穫は・・・ほぼ10倍増になった(p62)


・国連安保理が退屈なものだとは思いもしなかったが、
 実際そうなのだ。座って、メモを取り、またメモを取る。
 ・・・その日の議題は、いつもと同じ、未解決の紛争と
 人間の苦しみのリストだ。ブルンジ、イラク・・・(p190)


独立外交官 国際政治の闇を知りつくした男の挑戦
カーン ロス
英治出版
売り上げランキング: 191879
おすすめ度の平均: 4.5
5 組織とそれに属する個人で目的やその活動方針が一致しなくなった時、個人は葛藤し、そして。。。
4 国家ではなく人類のために・・・
5 新たな外交へ
5 外交官の独立請負人
4 外交交渉の携わる人たちの行動原理とは?

【私の評価】★★★☆☆(79点)


■著者紹介・・・カーン・ロス

 15年以上イギリス外務省に勤務。
 1998年から4年半国連安保理イギリス代表部。
 2004年外務省を辞め、外交コサンルティングの非営利組織
 インディペンデント・ディプロマットを設立。
 支援先は、コソボ、ソマリランド、西サハラのポリサリオ運動。


━━━━━━━━━━━

■関連書評■

a. 「外交敗戦」手嶋 龍一
【私の評価】★★★☆☆

b. 「インテリジェンス武器なき戦争」手嶋 龍一、佐藤 優
【私の評価】★★★★☆


c. 「地球を斬る」佐藤 優
【私の評価】★★★★☆


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