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環境利権「排出権商人」黒木 亮

2010/02/12公開 更新
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排出権商人


【私の評価】★★★☆☆(72点)


要約と感想レビュー

 温暖化ガスの排出権取引について小説化した一冊です。実は私も温暖化ガス排出権関係の仕事をしていたことあがるので、こそばゆいというか、懐かしいというか、不思議な感覚でした。


 京都議定書における日本の温暖化ガスの削減目標は1990年から6%の削減でした。この目標が達成できない場合、他国の余った排出権を購入するか、他国の温暖化ガス削減プロジェクトに資金提供することで排出権を手に入れる必要があることになってしまったのです。日本は世界一の省エネ国家なのですが、その省エネ国家が無理な目標を自分で設定して、他の国に金を払うという変な構造になってしまったのです。まさに、欧米諸国に嵌められた、または、日本自ら墓穴を掘ったのです。


・ご存知のとおり、日本の電力会社や鉄鋼メーカーは、温室効果ガスの自主削減目標を達成するために、排出権を購入しなくてはなりません。(p47)


 この本では、そうした排出権獲得プロジェクトを海外で作り上げ、日本の電力会社や鉄鋼メーカーに転売してサヤを稼ぐビジネスの実情を教えてくれます。元商社マンが書いているのですから、現実もこの小説のようなものだと理解して問題ないのではないでしょう。


 この本を読めば、温暖化ガス削減事業を環境を利権とする業界がどう見ていたのか、だいたいわかると思います。海外の国はただ金をもらって設備を作り、商社は手数料を抜いて、設備会社は設備を売り、電力会社や鉄鋼会社が金を払ったのです。最終的な負担は、日本国民に回さられるということです。お人よしの日本人は、温暖化ガス削減という美名を金で買ったのです。


・HFC23分解プロジェクト・・・排出権は中国企業に帰属するが、日本側はそれを全量購入し、電力会社などに売却する。排出権一トンにつき十ユーロ程度のサヤが抜ける見込みで、毎年五千八百ユーロ(約八十億円)が日本側三社に転がり込む。中国側にはその倍くらいの金が入り、関係者一同笑いが止まらないプロジェクトだ(p36)


 この本の最後に、「地球温暖化問題は、世紀のペテン」というメッセージが出てきます。この言葉を書くために、黒木さんはこの本を書いたのではないかと私は感じました。小説としては★2つですが、排出権の業界を知るには良い本だと思いましたので、本の評価としては★3つとします。


 黒木さん、よい本をありがとうございました。


この本で私が共感した名言

・地球温暖化問題は、世紀のペテン・・・太平洋では数十年ごとに水温が上下する「太平洋十年規模運動(PDO)」という現象があり、太平洋の高温・低温期は、地球の温度の周期とほぼ一致している。PDOは、1970年代半ばから高温期だったが、それが1998年で終わったと考えられ、今後、三十年くらいは、地球の気温が上昇しない可能性が高い(p410)


・2008年から2012年までの「第一約束期間」で日本が購入しなくてはならない排出権は、政府・民間合計で四億トンである。かりにトン当り15ユーロで買い付けるとすれば、約一兆円を支出しなくてはならない。(p336)


・UNFCCCは、発行される排出権量に応じて「登録料」をピンはねしているので、国連諸機関のなかでは、例外的に財政が豊かである。そのため、職員を大幅に増やしたり、方法論を複雑化したりして「マフィア化」している。(p273)



【私の評価】★★★☆☆(72点)



著者経歴

 黒木 亮(くろき りょう)・・・1957年生まれ。早稲田大学法学部卒業。三和銀行に入行。1988年から三和銀行ロンドン支店で国際協調融資、プロジェクト・ファイナンス等に関る。その後、大和証券英国法人、三菱商事英国現地法人でプロジェクトファイナンスに従事。2000年に国際金融小説『トップ・レフト』で作家デビュー。2003年7月に退社し、専業作家となる。


地球温暖化関係書籍

「「脱炭素」は嘘だらけ」杉山 大志
「異常気象の正体」ジョン・D.・コックス
「地球温暖化「CO2犯人説」は世紀の大ウソ」
「「地球温暖化」の不都合な真実」マーク・モラノ
「地球温暖化への挑戦」薬師院 仁志
「「地球温暖化」狂騒曲 社会を壊す空騒ぎ」渡辺 正
「地球はもう温暖化していない: 科学と政治の大転換へ」深井 有
「環境問題の嘘 令和版」池田 清彦
「排出権商人」黒木 亮
「環境問題はなぜウソがまかり通るのか3」武田 邦彦
「地球温暖化説はSF小説だった その驚くべき実態」広瀬隆
「CO2温暖化論は数学的誤りか」木本 協司
「チェンジング・ブルー気候変動の謎に迫る」大河内直彦


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この著者の本


コメント(1)

コメントありがとうございました。

温暖化問題は、「世紀のペテン」と言う雰囲気が出て来ましたよね。 環境ビジネスもバブル崩壊でしょうか。

安藤忠・加藤陽子など、読まれている本も同じものが多く
とても親近感を抱いた次第です。

また、ちょくちょくアクセスさせて頂きます。

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