「遥かなるケンブリッジ」藤原 正彦

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)
【私の評価】★★★★★(91点)


■著者は、文部省の長期在外研究員として、
 イギリスのケンブリッジ大学に1年間滞在しました。

 ケンブリッジといえば、オックスフォードとならんで、
 イギリスの英知の集まるところです。


■ケンブリッジの研究生活の中から、
 イギリス人の文化、習慣、雰囲気というものが見えてきます。

 衰えたとはいえ、世界を制覇した大英帝国なのですから、
 文化の厚み、歴史の厚さはたいしたものだと思いました。

 ・ロウアークラスの人々の、アッパーミドル以上への敵意はかなりの
  ものだった。西隣りに住むブライアンから、ラグビーの試合ならよいが、
  ロウアークラスの集まるサッカー試合には、家族連れで行かぬよう忠告
  されていた。(p159)


■この本で特に楽しかったのは、高邁なイギリス人教授に、
 ジョークで藤原さんが反撃するところです。

 知的ウィットが秀逸で、教養というものは
 こう使うべきであると、妙に納得してしまいました。

 ・この英文学者は、「以前日本から英文学科を訪れた人は興味深かった。
  チョーサーをすらすら読めるのに、ほとんど英語を話せなかった」と
  皮肉まじりに言った。・・・私が間髪を入れずに、「アーサー・ウェイリー
  は源氏物語を上手に英訳したが、日本語は話せなかったらしい」と言ったら、
  ニッコリうなずいてから、「よし、あなたの勝ちだ」と言った。(p204)


■藤原さんのジョークに笑いながら、
 イギリスのジョークと教養が理解できる一冊でした。
 本の評価としては、★5つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・イギリスに住んだ友人から、「イギリス人には舌がない」
  と聞いていたが、本当だった。舌はみなフランスへ行って
  しまったらしい。(p15)


 ・経験から判断すると、フェアーであることを、
  イギリス人は絶対的なことと考え、
  アメリカ人は重要なことと考え、
  ヨーロッパ人は重要なことの一つと考え、
  日本人は好ましいことと考える。(p35)


 ・昼食の時間には、サンドイッチを持って来る子と自宅に帰る子が半分強で、
  残りは、リンゴ一個とか、バナナ一本、ニンジン一本とチョコレートバー
  一本、などと様々だった。イギリスの子供の顔色が青いのは、天候ばかり
  でなく、無配慮な食生活にも関係していると思う(p62)


 ・マユミ・ザイラー先生は、寛太郎が上手に引けなくても、まず、
  「寛ちゃん、良かったよ!」と独特の抑揚のある日本語でほめ上げるのが
  癖だった。寛太郎が気分を良くした頃合を見て、「でもこうしたら
  もっとよくなるよ!」と言って技術的な注意を与えるのだった。(p180)


▼引用は、この本からです。

遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)
藤原 正彦
新潮社
売り上げランキング: 633
おすすめ度の平均: 4.5
5 イギリスから学ぶこと。
3 才能があったり,コネがあったりすると,いいなぁ
5 秀逸なエッセイ
5 英国の大学内情
4 イギリスとイギリス人を知ることで日本と日本人を知る。

【私の評価】★★★★★(91点)


■著者紹介・・・藤原 正彦(ふじわら まさひこ)

 1943年生まれ。お茶の水女子大学理学部教授。数学者。
 故・新田次郎と藤原ていの次男


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■関連書評■
a. 「3つに分けて人生がうまくいくイギリスの習慣」井形 慶子
【私の評価】★★★☆☆

b. 「国家の品格」藤原 雅彦、新潮社
【私の評価】★★★★☆


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