■尋常小学校を卒業した十二歳の村上青年は、
腕の立つコックになろうと決意しました。
そして、喫茶店の小僧として働き始めます。
先輩の見よう見まねで料理作りのコツを学んでいきました。
・見せには休憩時間がなく、開店中は休まず働く。・・・
無理して頑張っていたわけではない。料理を覚えたい、
一人前んありたいという向上心が体中にめらめらと燃え上がっていた。
何より、仕事が面白くて仕方がなかった。(p41)
■頑張りが認められ、喫茶店の料理長に推薦されたのが、
当時、フランス料理の先端を走る帝国ホテルです。
帝国ホテルの調理場に配属された村上氏は、
洗い場に回されました。
■ここでは「鍋屋」と呼ばれるくらい汚れた鍋洗いが重労働でした。
村上氏は鍋を洗いながらソースの味を覚えるつもりでしたが、
コックは塩やせっけんを入れてから洗い場に鍋をよこすのです。
これでは味はわかりません。
■村上氏は、鍋を徹底的に磨き始めました。
当時の鍋は内側はきれいでしたが、外側は汚れがついたものが
多かったのです。
村上氏は、鍋の外側を時間をかけて磨きこみました。
そして、だんだんとピカピカな鍋が増えてきました。
すると不思議なことに、スープが残った鍋が返ってくるように
なってきたのです。
・「おまえには料理人の心がわかっている」と、ぼそっとほめてくれる
親方もいた。必死の行動が先輩たちに伝わったのだ。うれしかった。
(p58)
■一流のコックになろうとした村上氏と、
その決意が行動となったとき、人は助けてくれる。
そうした人の世の仕組みがわかるような一冊でした。
一流の人の人生には何か共通したものがある・・・
と思いながら★4つとしました。
─────────────────
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・転進のきっかけは、いつも人の縁だった。「ここがいいぞ」と
勧められ、「こいつは骨惜しみしないやつだから」と
推薦してくれた。(p49)
・若い料理人に与える言葉は何か、とよく聞かれるが、
私は何よりもまず、「欲を持て」と言うことにしている。
そして、もう一つの助言は、「急ぐな」である。
・・・最も大事なのは基本である。(p203)
・異例の抜擢人事で新館料理長に就任したものの、若い料理長の
やることには反発も強く、ずぶとい神経を持つ私もさすがに
こたえた。その一方で、腹をくくってもいた。先輩に礼を尽くし、
立てるところは立てながら、必要なことは果断に実行していった。
(p141)
▼引用は、この本からです。
日本経済新聞社 (2004/07)
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抑制のきいた自伝
どんどん元気になりながら読み進めます
フランス料理の旗手なのか、はたまた虚像だったのか?【私の評価】★★★★☆(82点)
■著者紹介・・・村上 信夫(むらかみ のぶお)
1921年生まれ。12歳でブラジルコーヒーに入り、
銀座つばさグリル、新橋第一ホテルなどを経て、
1939年帝国ホテル見習い。
その後、パリのホテル・リッツなどで腕を磨く。
1958年帰国し、帝国ホテル新館料理長。
1970年取締役総料理長。
1996年専務取締役を退任して料理顧問。
2005年没。
─────────────────
■関連書評■
a. 「鷲の人、龍の人、桜の人 米中日のビジネス行動原理」キャメル・ヤマモト
【私の評価】★★★★★
b. 「ユダヤ5000年の教え」ラビ・マービン・トケイヤー、実業之日本社
【私の評価】★★★★★
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