人生を変えるほど感動する本を紹介するサイトです
本ナビ > 書評一覧 >

「ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争」高木 徹

2007/02/28公開 更新
本のソムリエ
本のソムリエ メルマガ登録[PR]

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

【私の評価】★★★☆☆(78点)


●旧ユーゴスラビアで勃発したボスニア紛争は、
 世界各地で起きている
 民族間の紛争の一つでした。


 しかし、PR戦略により、セルビア人は極悪人、
 ボスニア・ヘルツゴビナは被害者という
 世論が形成されました。


 ボスニア・ヘルツェゴビナ側が、
 セルビア側を民族浄化という言葉を用いて
 非難することでセルビア=民族浄化主義
 というイメージが定着したのです。


・「民族浄化」という言葉がなければ、
 ボスニア紛争の結末は
 まったく別のものになっていたに違いない。・・・
 ミロシェビッチ元大統領が、
 ハーグの監獄で失意の日々を
 送ることもなかっただろう。(p110)


●その後、NATOのコソボ空爆から
 ミロシェビッチが国際戦犯法廷で裁かれるまで
 セルビア側に不利な状況が続くこととなります。


 (国際戦犯法廷では、セルビア人虐殺の罪で、
  クロアチア人も逮捕されています)


・セルビア側は、経済制裁と、初動の遅れによって
 優秀なPR企業を雇って対抗することが
 できなくなってしまった。
 もし彼らが有能なプロの助けを借りることができていれば、
 たとえばモスレム側が作っていた「収容所」を発掘し、
 問題を拡大してオマルスカ「強制収容所」のダメージを
 相殺することもできたかもしれないのだ。(p381)


●欧米の世論を日本の味方とするために、
 PR会社、ロビー活動を
 一抱えにしてしまえという人もいますが、
 そこまでしなくても、ある程度の国家としての
 PR活動は重要でしょう。


・私はタトワイラー報道官を通じて、
 シライジッチ外相に、
 西側の主要なメディアを使って
 欧米の世論を味方につけることが
 重要だと強調した(ベーカー長官)(p33)


●日本の周辺では、
 「ザ・レイプ・オブ・南京」
 の書籍出版と映画化の動き、
 米国連邦議会における
 「従軍慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める決議案」
 など、日本の評判を落とそうとする勢力が、
 活発にPR活動をしているように感じるのは
 私だけでしょうか。


・どんな人間であっても、
 その人の評判を落とすのは簡単なんです。
 根拠があろうとなかろうと、
 悪い評判をひたすら繰り返せばよいのです・・
 たとえ事実でなくとも、詳しい事情を知らない
 テレビの視聴者や新聞の読者は
 信じてしまいますからね(ハーフ)(p345)


●日本がセルビアのようにならないために、
 重要な警鐘を鳴らす一冊ということで★3つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


・ハーフは、・・・
 いったんクロアチアと契約をかわすと、・・・
 プロのPR技術を駆使してクロアチア独立戦争が
 いかに正当なものか、セルビア人がいかに
 汚い連中であるかを世界にアピールしていた(p23)


・当時はまだ電子メールがない時代でしたから、
 ファックスが最も効率的な方法でした・・・
 そのすべてに、担当者の個人名が記載され、
 送ったファックスが必ず特定の誰かの目に
 留まるように配慮されている。(p56)


・ワシントンは三角形でできています。
 その三つの頂点にあるのは、大統領に率いられる
 政権、連邦議会、そしてメディアです。・・・
 この中にある一つを動かしたければ、
 他の二つを動かせばいいのです
 (ジム・マザレラ)(p82)


・(米国では)政権が代わるごとに
 主要スタッフや高級官僚が入れ替わり、
 優秀な人材が民間と役所を往復する、という
 日本では考えられないやり方は、
 彼らがPRのセンスを磨くという意味で
 プラスに作用しているのは間違いない(p138)

・「セルビア人の残虐行為」の情報の中には、
 根拠のない、荒唐無稽なものお多かった。・・・
 迫撃砲をわざと病院の脇に設置するのです。
 こちらが撃てば当然敵が反撃してきて、・・・
 砲弾がとなりにある病院の小児科病棟にも落ちます。・・・
 国際世論をひきつけるために、
 自分の国民を犠牲にするやり方ですよ(p263)


・中国・韓国では、戦後六十年を経て
 いまだに日本への反感が忘れられるどころか、
 逆に燃え盛っているように見える・・・
 日本の国家的なPR戦略の欠如を、
 一つの、しかし大きな要因として
 指摘せざると得ない。(p390)


▼引用は、この本からです。
ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)
高木 徹
講談社
売り上げランキング: 17345
おすすめ度の平均: 4.5
5 アメリカが大国である限り、そこにメディアがある限り必読。
5 こんなうまく描けるとは...
5 「セルビア」であり続ける国
5 必読!!
5 世論工作という情報戦争のドキュメンタリー

【私の評価】★★★☆☆(78点)



■著者経歴・・・高木 徹
 
 1965年生まれ。大学卒業後、NHKに入局。
 現在報道局勤務。
 2000年放送のNHKスペシャル
 「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」をもとに
 本書を執筆。講談社ノンフィクション賞・
 新潮ドキュメント賞を受賞。


楽天ポイントを集めている方はこちら



読んでいただきありがとうございました!

この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
人気ブログランキングに投票する
人気ブログランキングへblogrankings.png


メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」
42,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。
>>バックナンバー
もちろん登録は無料!!
        配信には『まぐまぐ』を使用しております。


お気に入りに追加
本のソムリエ公式サイト発行者の日記

<< 前の記事 | 次の記事 >>

この記事が気に入ったらいいね!

この記事が気に入ったらシェアをお願いします

この著者の本


コメントする


同じカテゴリーの書籍: