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「外交敗北―日朝首脳会談の真実」重村 智計

2006/12/29公開 更新
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外交敗北――日朝首脳会談の真実


【私の評価】★★★★☆(88点)


要約と感想レビュー

金丸信らが北朝鮮から資金提供を受けていた

北朝鮮問題となると必ずテレビに出てくる重村教授の著作ですが、テレビでは言えないことがこれだけあるのか!と驚きました。テレビのニュースを見るだけではわからない、北朝鮮問題の真実が明らかにされています。例えば、1990年までは、外交に権限も責任も持たない野党の政治家が、北朝鮮の手先としての役割を果たし、それ以降は、自民党の政治家が北朝鮮の利権に関係していたという。


まず、1990年までは、社会党を中心とした野党が、北朝鮮工作の手先として活動していたというのです。1990年代には、金丸信を中心とする自民党議員が、北朝鮮から資金提供を受け、動いていたらしいのです。具体的には、村山訪朝団の合意に従い、直ちに十万トンのコメが支援され、その後さらに五十万トンのコメ支援が行われましたが、拉致問題はまったく解決しませんでした。五十万トンのコメは、一千億円を超えるものであり、コメ支援を決定したのは慰安婦談話の河野洋平外相だったのです。


北朝鮮に反対の立場を取れば自分の身が危険になり、北朝鮮に賛成する立場を取れば利権にからめるのですから、政治家が安易なほうを選択したくなる気持ちもわからないではありません。


・「・・私はも限界ですよ。幹部に目を付けられていて、飛ばされそうですよ。朝鮮総連が名指しでいやがらせをするから」(テレビ朝日で、長い間拉致問題を追いかけてきた芳沢茂雄記者)(p238)


く国交正常化すれば日本が資金協力

先の小泉首相の訪朝では、結果的に日本から一銭も資金を提供せずに一部の拉致被害者を取り戻すことができました。しかし、一歩間違えば、犯罪国家北朝鮮を経済支援することになるだけでなく、北朝鮮の核問題、偽札造り、麻薬犯罪を敵視する米国との関係が決定的に悪化した可能性があったようです。


米国と( 価値観 )を共有するグループにしてみれば、北朝鮮の核問題と犯罪行為、拉致問題が解決しなければ、資金を北朝鮮に出すことはできないと考えます。しかし、北朝鮮との( 関係 )を重視するグループは、できるだけ早く国交正常化し、資金協力をしたいと考えていたのです。


一般庶民の感情としては、犯罪国家に金をやるのは、おかしいと考えるのが普通ですが、そう考えないグループがあるのは、何らかの見返りがあるのかもしれません。


・米国は北朝鮮を「悪の枢軸」「独裁国家」「核拡散の元凶」「犯罪国家」と明言している。日本が国交正常化に踏み切れば、「共通の敵」と「共通の価値観」は、一瞬にして失われる。・・日本は独裁・犯罪国家を支援したことになる。(p221)


く国交正常化すれば日本が資金協力

安倍副長官と中山参与は北朝鮮に戻すべきではないと主張し、田中アジア大洋州局長は五人を北朝鮮に戻すよう主張したことが知られています。田中氏は五人の人生よりも、「X氏との信頼関係」を大切にし日朝協議の継続を重視したのです。結果して、X氏は粛清されたという。


日本が安倍首相を選んだということは、核問題、拉致問題が解決しなければ北朝鮮への経済協力はないという米国と同じ価値観を選択したということでしょう。拉致問題を利用して、日本から金を出させ、日米関係を崩壊させるという北朝鮮の工作は、もう一歩のところで失敗したことになるわけです。


実は、小泉首相の訪朝は、国家としての綱渡り状態だったようです。米国との関係、北朝鮮の工作活動、マスコミ、拉致問題、外務省、官邸、国会議員がうごめく国家外交の力学は、テレビでは全くわからないことです。ちょっとでも北朝鮮に興味のある人なら、読んでみてほしい一冊です。限りなく★5に近い★4つとしました。


この本で私が共感した名言

・外交官は「ウソをつかない」ことが、原則である・・・日朝首脳会談の立役者とされたアジア大洋州局長は、取材記者の間で「平気でウソをつく外交官」と言われた。新聞記者がウソを責めると「外交官は、国益のためにウソをついてもかまわない」と言った、という逸話を残している。(p116)


・外務省高官の中には、「六ヶ国協議で拉致問題なんか、恥ずかしくて議論したくない。もっと大きな問題がある」と、取材記者に語る外交官もいる。ウソではない。(p228)


・日本の外交記事は政治部の記者が書いている。政治記者には、国際政治の現場で取材した経験はない・・日本の新聞は、国際事情を知る外信(外報)記者に外交記事を書かせない。だから、外交記事は政治家や官僚の宣伝記事になりかねない・・アメリカの新聞は、外交記事を海外特派員経験のある専門記者に書かせている。(p260)


▼引用は、この本からです。
外交敗北――日朝首脳会談の真実
重村 智計
講談社
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【私の評価】★★★★☆(88点)


目次

まえがき 拉致は「ファイナル・ボキャブラリー」だった
第1章 米国は日朝首脳会談に反対であった
第2章 外交放棄のミスターXとの交渉
第3章 日朝首脳会談の真実
第4章 平壌とワシントンからの証言
第5章 外交敗北
終章 日米同盟の再建
あとがき 北朝鮮情報の読みかた



著者経歴

重村 智計(しげむら としみつ)・・・1945年、中国に生まれる。大学卒業後、1971年毎日新聞社入社。1979年から85年までソウル特派員。1989年から94年までワシントン特派員。帰国後、毎日新聞論説委員を経て、早稲田大学国際教養学部教授。


北朝鮮関係書籍

「メディアは死んでいた-検証 北朝鮮拉致報道」阿部雅美
「ウルトラ・ダラー」手嶋 龍一
「見えない戦争 インビジブルウォー」田中 均
「外交敗北―日朝首脳会談の真実」重村 智計


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