「外交敗北」重村 智計

外交敗北――日朝首脳会談の真実
【私の評価】★★★★☆88点


●北朝鮮問題となると必ずテレビに出てくる重村教授の著作ですが、
 テレビでは言えないことがこれだけあるのか!と驚きました。

 テレビのニュースを見るだけではわからない、
 北朝鮮問題の真実が明らかにされています。


 ・1990年までは、外交に権限も責任も持たない野党の政治家が、
  北朝鮮の手先としての役割を果たした。それ以降は、自民党の
  政治家が北朝鮮の利権にむらがった。(p246)


●まず、1990年までは、社会党を中心とした野党が、
 北朝鮮工作の手先として活動し、

 1990年代には、金丸信を中心とする自民党議員が、北朝鮮から
 資金提供を受け、動いていたことをほのめかしています。


 ・村山訪朝団の合意に従い、直ちに十万トンのコメが支援された。
  その後、さらに五十万トンのコメ支援をした。だが、拉致問題は
  まったく解決しなかった。五十万トンのコメは、一千億円を超える
  金額になる。コメ支援を決定したのは、当時の河野洋平外相であった。
  (p124)


●北朝鮮に反対の立場を取れば、自分の身が危険になり、
 北朝鮮に賛成する立場を取れば、利権にからめるならば、
 安易なほうを選択したくなる気持ちもわからないではありません。


 ・「・・・私はも限界ですよ。幹部に目を付けられていて、飛ばされそう
  ですよ。朝鮮総連が名指しでいやがらせをするから」
  (テレビ朝日で、長い間拉致問題を追いかけてきた芳沢茂雄記者)(p238)


●先の小泉首相の訪朝では、結果的に日本から一銭も資金を提供せずに
 一部の拉致被害者を取り戻すことができましたが、

 一歩間違えば、犯罪国家北朝鮮を経済支援することになるだけでなく、
 北朝鮮の核問題、偽札造り、麻薬犯罪を敵視する米国との関係が
 決定的に悪化した可能性があったようです。


 ・米国は北朝鮮を「悪の枢軸」「独裁国家」「核拡散の元凶」「犯罪国家」
  と明言している。日本が国交正常化に踏み切れば、「共通の敵」と
  「共通の価値観」は、一瞬にして失われる。・・・日本は独裁・犯罪
  国家を支援したことになる。(p221)


●米国と( 価値観 )を共有するグループにしてみれば、
 北朝鮮の核問題と犯罪行為、拉致問題が解決しなければ、
 資金を北朝鮮に出すことはできないと考えます。

 しかし、北朝鮮との( 関係 )を重視するグループは、
 できるだけ早く国交正常化し、資金協力をしたいと考えます。

 一般庶民の感情としては、犯罪国家に金をやるのは、
 おかしいと考えるのが普通ですが、そう考えないグループがあるのは、
 何らかの見返りがあるのかもしれません。


 ・安倍副長官と中山参与は、北朝鮮に戻すべきではないと主張した。
  アジア大洋州局長は、五人を北朝鮮に戻すよう主張した。五人の
  人生よりも、X氏との個人関係を重視したのである。・・・
  彼は「日朝間の信頼関係が崩れてしまう。日朝協議ができなくなる」
  と主張したという。(p156)


●日本が安倍首相を選んだということは、
 核問題、拉致問題が解決しなければ北朝鮮への経済協力はないという
 米国と同じ価値観を選択したということでしょう。

 拉致問題を利用して、日本から金を出させ、日米関係を崩壊させるという
 北朝鮮の工作は、もう一歩のところで失敗したことになるわけです。


●実は、小泉首相の訪朝は、国家としての綱渡り状態だったようです。

 米国との関係・・・北朝鮮の工作活動・・・マスコミ・・・
 拉致問題・・・外務省・・・官邸・・・国会議員。
 こうした国家外交の力学は、テレビでは全くわからないことです。

 ちょっとでも北朝鮮に興味のある人なら、読んでみてほしい一冊です。
 限りなく★5に近い★4つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・外交官は「ウソをつかない」ことが、原則である・・・
  日朝首脳会談の立役者とされたアジア大洋州局長は、取材記者の間で
  「平気でウソをつく外交官」と言われた。新聞記者がウソを責めると
  「外交官は、国益のためにウソをついてもかまわない」と言った、
  という逸話を残している。(p116)


 ・外務省高官の中には、「六ヶ国協議で拉致問題なんか、恥ずかしくて
  議論したくない。もっと大きな問題がある」と、取材記者に語る
  外交官もいる。ウソではない。(p228)


 ・日本の外交記事は政治部の記者が書いている。政治記者には、国際政治
  の現場で取材した経験はない。・・・日本の新聞は、国際事情を知る
  外信(外報)記者に外交記事を書かせない。だから、外交記事は
  政治家や官僚の宣伝記事になりかねない。・・・アメリカの新聞は、
  外交記事を海外特派員経験のある専門記者に書かせている。(p260)


▼引用は、この本からです。

外交敗北――日朝首脳会談の真実
重村 智計
講談社
売り上げランキング: 115656
おすすめ度の平均: 4.5
5 日本の国民の多くに読んでもらいたいです。
3 歴史の側面を垣間見ることが出来ます
5 拉致事件は何故解決できないか?!
5 危なかった日朝首脳外交の課題を知らしめた良書
5 「外交」の本質

【私の評価】★★★★☆88点


■著者紹介・・・重村 智計(しげむら としみつ)
 
 1945年、中国に生まれる。大学卒業後、1971年毎日新聞社入社。
 1979年から85年までソウル特派員。
 1989年から94年までワシントン特派員。
 帰国後、毎日新聞論説委員を経て、早稲田大学国際教養学部教授。


楽天ポイントを集めている方はこちら



読んでいただきありがとうございました!

この記事が参考になった方は、クリックをお願いいたします。
↓ ↓ ↓ 
人気ブログランキングに投票する
人気ブログランキングへにほんブログ村 本ブログへ


メルマガ「1分間書評!『一日一冊:人生の智恵』」
42,000名が読んでいる定番書評メルマガです。購読して読書好きになった人が続出中。
もちろん登録は無料!!
        配信には『まぐまぐ』を使用しております。



お気に入りに追加
本のソムリエ公式サイト発行者の日記

トラックバック(1)

トラックバックURL: http://1book.biz/mt/t-kazu-b/3365

【本ナビ】 一日一冊読書感想集 - 「警察ウラの掟」北芝 健 (2009年4月27日 22:02)

【私の評価】★★★☆☆(78点) ■日本の安全を守る警察という組織の  笑える... 続きを読む

コメントする

★★★★★ 94点の書籍
 失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する 会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書) なぜ消防署で住宅ローンがバカ売れするのか?―お役所系集団に口コミで売り込む方法 発酵道―酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方 「なりたい
自分」に
なる心理学
死ぬまでに知っておきたい 人生の5つの秘密
最後の
パレード
成功者の習慣 成功する人は何が違うのか[CD] 交渉術 挑戦する経営―千本倖生の起業哲学 トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦〈1〉ブランド人になれ! (トム・ピーターズのサラリーマン大逆襲作戦 (1)) 弁護士が教える 気弱なあなたの交渉術
脳が教える! 1つの習慣 「先読み力」で人を動かす ~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント~ 小泉官邸秘録 あなたに奇跡を起こす笑顔の魔法―心から笑えなくても大丈夫 専業主婦が年収1億のカリスマ大家さんに変わる方法 スピリチュアルワーキング・ブック
ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する―絶対に失敗しないビジネス経営哲学 史上最高のセミナー 中国の「核」が世界を制す 続・志のみ
持参
ちょっとアホ!理論 倒産寸前だったのに超V字回復できちゃった! 社長、「小さい会社」のままじゃダメなんです!
出会う人みな、仕事の先生 冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 松下幸之助翁82の教え―私たち塾生に語った熱き想い 話し方入門 新装版 マザー・テレサ―あふれる愛 幸運を引きよせるスピリチュアル・ブック―“不思議な力”を味方にする8つのステップ
いま自分の
ために何が
できるか
 
社長の
販売学
 
ユダヤ5000年の教え―世界の富を動かすユダヤ人の原点を格言で学ぶ   夜回り先生 (小学館文庫)   本気で生きよう!なにかが変わる   変な人の書いたツイてる話  
こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語   影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか   面白いほど成功するツキの大原則―ツイてツイてツキまくる頭の使い方教えます   NEWグランド
マネジメント
 
坂の上の雲〈1〉    
           
           

最近のLine up

バックナンバー

Powered by Movable Type 4.25