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「食品の裏側」安倍 司

2006/08/28公開 更新
本のソムリエ
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食品の裏側―みんな大好きな食品添加物

【私の評価】★★★★★(93点)


●安倍 司さんは大学を卒業し、
 食品添加物の商社に入社します。


 そこで販売する食品添加物は、
 魔法の粉でした。


 土色のタラコが添加物の液に一晩漬けるだけで、
 肌色のタラコになる。


 シワシワ干し大根が、一晩で
 黄色のポリポリたくあんになるのです。


 ・私はよく「添加物は職人要らず」と言いますが、
  添加物を使えば、技術がなくても簡単に
  一定のレベルのものが
  つくれてしまうのです。(p28)


●そして、安倍さんは、
 日本一の添加物屋になろうと決意します。


 そして、現場を知るために朝4時に起きて
 かまぼこ工場でお手伝い、
 麺の製造工場、ハム製造工場に日参しました。


 そのようにして工場社長の信頼を得ながら、
 添加物をどんどん売り、
 「だしの素」を開発して大ヒットさせるなど、
 食品添加物の神様と呼ばれるまでになるのです。


●そして、安倍さんの長女の誕生日がやってきました。
 長女のためにご馳走がテーブルに準備されています。


 その中から一つのミートボールを口にした瞬間、
 安倍さんは凍りつきました。


 これは食べてはいけない!


 「とにかくこれは食べちゃダメ、
  食べたらいかん!」(p41)


●それは、自分が開発したミートボールだったのです。


 現在はペットフードに使用されている端肉に、
 廃鶏のミンチ肉を加え、ビーフエキス、化学調味料、
 着色料、保存料、PH調整剤などを
 大量投入して作ったものでした。


 廃棄されるようなクズ肉と
 添加物の合成物でしかなかったのです。


 ・ある工場の工場長Aさんは、
  いつも「俺のところの特売用ハムはだめ。
  とても食べられたものじゃない」と言っていました。
  漬物工場の経営者Bさんもよく
  「『価格破壊』の商品とはいえ、うちの漬物は買うなよ」
  と言っていました。・・・レンコン会社の社長Cさんも、
  「あのレンコンは自分では食べない」
  と言っていました。(p41)


●その日の夜、安倍さんは眠れませんでした。


 日本一の添加剤屋となろうと頑張ってきたのに、
 自分の開発した商品を、
 自分の子どもに食べさせたくないとは・・・。


 どこかに矛盾がある。


 次の日、安倍さんは会社を辞めました。


●食品添加物のプロから見ると、
 食品添加物をすべてなくすることは
 現実的ではないようです。


 添加物には、それなりのメリットがあり、
 今求められているのは、
 添加物の節度のある使い方なのです。


 ・私たちは「食品添加物のメリット」という「光」の部分も
  忘れてはいけないと思うのです。・・・
  いつでもどこでも食べたいものが手に入るという
  「便利さ」が享受できるようになったのは、
  加工食品の発達があったからこそ。(p185)


●巷では、「健康」ブームに乗じて
 合成着色料無添加、手づくりなどと
 PRしている商品も多いようです。


 そうした商品を見分けるには、
 商品のウラに記載されている
 原材料名を見る力が必要とされます。


 ・20種類のうち、「合成着色料」を2~3種類だけはずして、
  ほかの添加物はそのまま。
  それで「合成着色料を使っていません」と
  高らかに謳っている。
  こんな消費者を誤解させるような話があって
  いいのでしょうか。(p62)


●添加物ゼロは現実的ではないものの、
 手づくりをPRするならば、
 可能な限り添加剤は
 使わない工夫をするべきなのでしょう。


 ・私は怒りを禁じえませんでした。
  目の前のおばちゃんにではなく、
  この添加物を大量に使用した
  「おばあちゃんの手づくり漬物」を
  平然と販売している農協の姿勢に対してです。(p76)


●一時は食品添加物の神様と呼ばれながら、
 自分の仕事が人間として誇れるものでないと気づいたとき、
 会社をスパッとやめた著者に
 一流の人間を感じました。


 食品が工業化されている現在、
 食品の現実を直視させてくれる一冊です。
 ★5つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・1000円のしょうゆが存在する一方で、
  198円のしょうゆが特売で売り出されるのはなぜか。
  5倍もの価格差が存在する理由は何か。
  その理由は・・・ちゃんと「裏」に書いてあります。(p102)


 ・「スナック菓子は食べてはいけませんよ」とよく言います。
  しかしそう言いながらも、味噌汁や鍋に使うだしの素や○○の素で、
  味のベースを教えてしまっているのです。・・・
  お母さん自身は気づいていないかもしれませんが、
  言っていることとやっていることが全然違うのです。(p168)


 ・「教えてもいいですよ」私は訪ねてくる業者に、
  こう答えるようにしています。
  「でもそれと引き換えに、
  魂を売ることになるのですよ。
  職人としての魂、食をつくる人間としての魂(p225)


▼引用は、この本からです。
食品の裏側―みんな大好きな食品添加物
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【私の評価】★★★★★(93点)



■著者経歴・・・安倍 司

 1951年生まれ。添加物商社に勤務し、食品添加物の神様と呼ばれる。
 しかし、添加物の大量使用に疑問を持ち、退職。
 現在は、自然海塩「最進の塩」研究技術部長。


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