(評価:★★★★★)91点
●この世の中には完全なる正義、完全なる悪というものはありません。
同じ事象も、ある立場からみれば正義、ある立場から見れば悪という
側面を持っています。
●そうした視点で、一時期、新聞を騒がせた鈴木宗男と田中眞紀子と外務省
の戦い、それから波及したようなムネオハウスがらみでの鈴木宗男の逮捕
を考えるためには、逮捕された外務省佐藤優氏が書いた本書は最適の一冊
でしょう。
・「この事件は横領でも背任でもどっちでもいける。こっちが背任にした
のは、カネに触っていない東郷を捕まえるためだった。あんたと前島だけ
ならば横領でよかったんだ。・・・これは鈴木宗男を狙った国策捜査
だからな。だからあんたと東郷を捕まえる必要があった。(p233)
●この本を読んで驚くのは、マスコミで報道される鈴木宗男氏と著者の
イメージと、本書で描かれる両氏のイメージの格差です。私は、著者の
佐藤優氏は人生をかけても筋を通す、かなり優秀な人であると感じました。
・「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショーと週刊誌
の論調で事件ができていくことになるよ」「そういうことなんだと思う。
それが今の日本の現実なんだよ」「それじゃ外交はできない。ましてや
日本のために特殊事情を活用することなどできやしない」「そういうこと
はできない国なんだよ。日本は。あなたはやりすぎたんだ。(p288)
●検察が考えるように、国策捜査で捕まる人たちは皆さんたいへん能力が
あるので、検察に協力して前面自供し、早期に社会復帰してもらわなけれ
ばならないというのに説得力があるのが悲しいのですが、それが日本の
現実なのでしょう。
・「下手に偽計業務妨害だけが部分無罪になったりすると、こっち(検察)
は組織の面子に賭けて上にあげるぜ。時間が数年無駄になる。呑み込ん
じゃった方が全て速く終わるぜ」正直言って、長期裁判は嫌だ。ここで
呑み込んでしまいたくなった。しかし、ここは筋を通さなくては一生後悔
することになると思った。(p332)
●見せしめ裁判というものは、社会の規律を正しくするという意味で大事な
ものなのでしょう。ただ、それが権力闘争の結果であったり、一時の世論
に沿ったものであるだけでなく、より一段高い視点からも考えるべきもの
だと思います。
●それは見せしめ裁判というものが、個人個人に与える影響だけでなく、
組織に影響し、最終的には社会全体に影響するからです。水が澄めば
見た目はきれいではありますが、逆に魚が住まなくなってしまう
ようなことがあれば、それは本末転倒ということでしょう。
●とはいえ、事件の両面を見るという視点だけでなく、日本の政治・
外交のあり方、そして日本の現実を考える良書と判断し★5つと
しました。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・モスクワで親しくしていたソ連時代の政治犯のことばを思い出す。
「強い者の方から与えられる恩恵を受けることは構わない。しかし、自分
より強い者に対してお願いをしてはダメだ。そんなことをすると内側から
自分が崩れる。矯正収容所生活とは結局のところ自分との戦いなんだよ」
(p13)
・田中さんは『世の中には、家族、使用人と敵しかいない』と公言している
んだけど、君や東郷に対する目つきは敵に対する目つきだ(外務省幹部)
(p52)
・「いや、俺たち外務省員のプライドが大切なのだ。田中大臣なんかに負けて
られない」(野上)「その点について私は意見が違います。プライドは人の
目を曇らせます。基準は国益です。」(p99)
・田中女史の、鈴木宗男氏、東郷氏、私に対する敵愾心から、まず「地政学
論」が葬り去られた。それにより「ロシアスクール」が幹部から排除され
た。次に田中女史の失脚により、「アジア主義」が後退した。「チャイナ
スクール」の影響力も限定的になった。そして、「親米主義」が唯一の
路線として残った。(p118)
・外務省が私の報償費(機密費)に関する領収書を全て任意提出したという
ことを伝え、その一部を私に提示した。私の情報源の名前も記載されてい
た。外務省が「門外不出にする」といった書類が検察に渡されたことは、
私にとって大きなショックだった。(p245)
・外国公務員への贈賄に関するこの法律が、法実務的観点から欠陥がある
ことと、このニュースが表に出て、三井物産の清水社長が引責辞職した
ので、うち(検察)の上の方には『もうこれでいいじゃないか』という
感じもあって、ああいう線引きになったんだよ(p344)
・「何で丸紅は見逃されているの」「僕たちも丸紅は三井から五千万円も
もらってけしからんと怒っている。しかし、国策捜査だから鈴木さんと
関係のある三井物産だけがやられて丸紅はおとがめなしなんだ」(p344)
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曝け出された国策捜査の実態と目的
曝け出された国策捜査の実態と目的
国家について考える
国策捜査とは時代のけじめ
検察の捜査について好奇心がそそられる(評価:★★★★★)91点
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