●著者の林 青梧氏は、南京大学教授として5年間中国で生活を送りました。
●この体験は10年以上前のことであり、現在の中国とはかなりの差があると
思われますが、作家でもある林 青梧氏の鋭い観察眼と読みやすい文章が
中国人を理解する一助になるはずです。
・出入口では行列をつくらず、われ先に押しかける。禁煙の指示を守らない。
公衆トイレで便を流さない。人が集まれば、すぐ賭博のご開帳だ。人の
恩義はたいてい忘れる。(p139)
●中国でのビジネスが難しいという話をよく聞きます。日本の商習慣と全く
ことなる環境ですから、それも当然でしょう。売掛金を払わない、合弁企業を
乗っ取るなど色々なトラブルがあるようです。
・「嘘」については、日本と中国では受け取られ方が違う。日本では罪と
見られるが、中国では方便と言えるようだ。社会主義に対して本心を
隠すことが、おそらく現代中国では嘘の出発、原点なのであろう。それ
が方便として定着して、中国人は平気で嘘をつく。嘘が社会に溢れる現象
が、当然発生することになる。(p77)
●しかし、これからのビジネスにおいて中国を避けることはできないでしょう。
いまの段階で原材料の価格が上昇するほど大きな影響力を持っている中国が、
もし、台湾のように経済成長したとすれば、経済、軍事ともに日本にとって
無視できない相手になるでしょう。
●そういう意味で、日本は中国への経済進出には失敗できないのです。
なぜなら、中国を台湾のように経済発展させ、武力で資源を奪うよりも、
日本と組む商売によって儲けるほうが効率的であることを中国に理解
させなくてはならないからです。
・中国には四つの階級がある・・・「支配階級」・・・権力をふりかざして
威張り、収賄にふける。・・・「商人階級」・・・タチが悪くて頭の良い
人間が、官吏などの支配階級にくっついて商売に手を出す。・・・「知識人」
・・・きわめて優秀なのに、昔もいまもちっとも恵まれない・・・「労働
階級」。労働者と農民に分かれる。(p61)
●そのためにも、このような本で中国というものを事前に学び、実際に現地で
中国人と付き合うときには、適切な行動がとれるようになりたいものです。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・中国の上層知識人の家庭教育で、おおいに見習うべきことがひとつある。
子供がやっと歩きはじめ、言葉をなんとか聞き取ることができるように
なったとき、耳から教え込むことである。「唐宋詩選」である。(p42)
・教師の勤務評定が厳しいのは、よいことである。日本の大学、とくに私立
のマンモス大学のように、いったん教授になると一生無事、論文など
書かずに、学部長や学長選挙にひたすら奔走するだけが身上なのとは、
だいぶ違う(p46)
・税金を満額払うくらいならば、その何分の一かでも賄賂に使って脱税を
見逃してもらったほうが安上がりだと考え、それがまた現実に可能な
社会なのである(p107)
・まず公衆トイレだ。大が流してあるのを見たことがない。次に入った者が、
邪魔なら流せばいい。自分のためだけに行動するという中国人の大原則が、
ここから始まるかのようである。他人のために流しておこうという気持ち
など、中国人にはサラサラない。(p88)
・性善説を信奉する日本人の中に、時として桁はずれの悪人が出て世間を
驚かせる(もっとも、この点でも中国人には及ばないが)のと同様に、
中国人の中には日本人の遠く及ばないほどの高人格者が現れる。(p106)
・「民工」と呼ばれる流民たちは、・・・高圧電線を盗もうとして何人も
感電死するのを見てはじめて危ないと気づき、道路のマンホールは鉄屑
屋に売るためにおいてあると考え、自動販売機は路上に放置してある
金庫だと思う種族である。(p127)
「中国の希望と絶望」林 青梧、かんき出版(1996/09) ¥1,529
(評価:★★★☆☆)
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